MMT0〜5を臨床でどう使う?

数字をつけるより「変化を伝える」ことが大切
「右上肢MMT3です」
脳卒中患者さんの申し送りや記録で、よく使われる表現です。
では、「MMT3」と聞いたとき、患者さんの腕が実際にどのように動く状態なのか、自信をもって説明できるでしょうか?
MMTは、筋力を0〜5の数字で表すシンプルな評価方法です。
しかし、臨床で本当に大切なのは、数字をつけることだけではありません。
「昨日より動かなくなった」
「ベッド上では動かせるけれど、持ち上げられない」
「同じMMT4でも、前回より抵抗に耐えられなくなっている」
このような「変化」を捉え、チームで共有することが、脳卒中患者さんの看護・リハビリテーションでは重要になります。
今回は、MMT0〜5それぞれが何を意味するのかを確認しながら、臨床でどのように評価・記録し、患者さんの変化をどう伝えるかを考えていきます。
まずはMMT0〜5を整理しよう
MMT(徒手筋力テスト)は、筋力を0〜5の6段階で評価する方法です。
MRC(Medical Research Council)筋力スケールでは、対象となる筋肉に期待される最大筋力を基準として、筋力を評価します。
2026年6月16日更新の英国Medical Research Councilの資料でも、0〜5の尺度として示されています。
覚え方の基本は、
「重力に勝てるか」「抵抗に勝てるか」
です。
MMT0
筋収縮がまったく確認できない状態です。
MMT1
関節は動かないものの、触診すると筋肉の収縮をわずかに感じる状態です。
MMT2
重力を取り除けば、関節を動かせる状態です。
例えば、ベッド上で腕を滑らせれば動かせるものの、重力に逆らって腕を持ち上げることはできません。
MMT3
重力に逆らって、関節を動かせる状態です。
ただし、検者が抵抗を加えると、その位置を保つことができません。
MMT4
ある程度の抵抗に逆らって、関節を動かせる状態です。
MMT5
十分な抵抗に耐えられる、正常筋力です。
このように、MMTは「どの程度の力を出せるか」を段階的に評価します。
臨床で特に重要なのは「MMT2」と「MMT3」の境界
MMT0〜5の中でも、臨床で特に意識したいのが、MMT2とMMT3の境界です。
ポイントは、
「重力に逆らって動かせるか」
ということです。
MMT2では、重力を取り除けば動かせます。
一方、MMT3になると、重力に逆らって関節を動かせるようになります。
この違いは、単なる「筋力の数字の違い」ではありません。
腕や脚を重力に逆らって持ち上げられるかどうかは、移乗や歩行、転倒リスク、日常生活動作にも大きく関係します。
そのため、MMTを評価するときには、単に「3だから軽い」「2だから重い」と数字だけを見るのではなく、実際に患者さんが何をできるのかまで考えることが大切です。
「MMT4」だけでは、患者さんの状態は十分に伝わらない
では、MMT4やMMT5の場合はどうでしょうか。
MRCスケールは弱い筋力、特に0〜3の評価では比較的信頼性が高い一方、4〜5では検者の力加減などによって評価にばらつきが生じやすいことが報告されています。
そのため、記録では「右上肢MMT4」と数字だけで終わらせず、
どの姿勢で、どの関節を、どこまで動かせたのか
を添えることが大切です。
例えば、
「右上肢MMT3。肩関節は約60度まで挙上可能だが、保持できず徐々に下降する」
と記載すれば、「MMT3」という数字だけの場合よりも、患者さんの状態を具体的にイメージできます。
さらに、
「前回は90度まで挙上可能だったが、本日は60度まで」
という情報が加われば、患者さんに起きている変化も伝わります。
臨床で重要なのは、「MMTはいくつだったか」だけではありません。
前回と比べて、何が変わったのか。
そこまで記録・申し送りできると、チームで患者さんの状態をより正確に共有できます。
MMTが低下したとき、「筋力が落ちた」と決めつけない
脳卒中患者さんでは、痛みや疲労、意識障害、失語、失行、理解力の低下などによって、筋力を正しく評価できないことがあります。
そのため、前回よりMMTが低下していた場合、
「今日は力が入りにくいだけかな」
と簡単に判断してしまわないことも重要です。
特に、これまでできていた動作が急にできなくなった場合には、意識レベルやその他の神経症状に変化がないかを確認します。
また、血圧や血糖など、全身状態についても合わせて確認する必要があります。
「右上肢MMTが4から3になった」
これは単なる数字の変化ではありません。
患者さんに何か変化が起きている可能性を示すサインかもしれないのです。
だからこそ、MMTを評価するときには、その数字だけを見るのではなく、患者さん全体の状態と合わせて考えることが大切です。
MMTは「数字をつけるため」の検査ではない
MMTは、患者さんの筋力を0〜5の数字に置き換えるためだけの検査ではありません。
大切なのは、その数字の背景にある、
「患者さんが何をできるのか」「前回から何が変わったのか」
を捉えることです。
「右上肢MMT3だった」
だけではなく、
「前回は肩関節を90度まで挙上できたが、今日は60度までしか挙上できない」
と伝える。
このように、患者さんの状態を具体的に言葉にすることで、看護師、リハビリスタッフ、医師など、チームのメンバーが同じイメージを持ちやすくなります。
そして、脳卒中患者さんの
「昨日と違う」「さっきまでできていたことができない」
という小さな変化は、ときに重要な神経症状のサインである可能性があります。
だからこそ、
数字の先にある患者さんの動きを見る。そして、その変化をチームにつなげる。
それが、臨床でMMTを活用するうえで大切な視点です。
MMT0〜5を覚えることはもちろん大切です。
でも、そこで終わらせない。
「この数字は、患者さんが実際に何をできる状態なのか?」
「前回と比べて、何が変わったのか?」
そんな視点を持ってMMTを使うことで、日々の看護で見えるものが変わってくるかもしれません。
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