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降圧薬は“いつ飲むか”より“どう下がるか”

  • 2月21日
  • 読了時間: 5分

更新日:3 日前


降圧薬の投与とタイミングをエビデンスを基に現役医師が徹底解説
降圧薬の投与とタイミングをエビデンスを基に現役医師が徹底解説

「降圧薬は、夜に飲むのが正解」


そう信じて患者さんに説明してきた看護師は、少なくないのではないでしょうか。


夜間血圧が高いと脳卒中リスクが上がる。


だから、夜に飲んだほうがいい。


このロジックは、一見とても“正しそう”に聞こえます。


しかし、**約21,000人を対象にした大規模臨床試験「TIME試験」**は、

この常識に、静かに、しかし決定的な問いを投げかけました。


「降圧薬は、朝でも夜でも、予後は変わらない」

この事実を、あなたはどう捉えますか?


脳神経外科領域では、

「夜間血圧」「non-dipper」「転倒」「せん妄」「夜間排尿」など、

降圧管理ひとつで、患者さんの安全性と予後が大きく左右されます。


本コラムでは、TIME試験 × 夜間血圧(dipper/non-dipper)を、

“看護の臨床判断”につなげて理解する視点を、わかりやすく解説します。


読み終えたとき、あなたの降圧薬への見方は、きっと変わるはずです。



― TIME試験と夜間血圧(dipper/non-dipper)を看護の視点で理解する ―


はじめに


高血圧患者さんのケアに関わっていると、

「降圧薬は夜に飲んだ方がいいのでは?」

「夜間血圧が高いと脳卒中が多いと聞いた」

といった疑問や質問を受けることがあります。


確かに、夜間血圧は脳卒中と深く関係しています。

しかし近年のTIME試験により、

降圧薬の内服時間(朝か夜か)そのものは、予後に影響しない

ことが明確になりました。


ここでは、

 • TIME試験の結果

 • 夜間血圧の「dipper/non-dipper」という考え方

をつなげて、看護師としてどう理解すべきかを解説します。



TIME試験の要点(おさらい)


TIME試験(Treatment In Morning vs Evening)は、

約21,000人の高血圧患者を対象に、

 • 降圧薬を朝に内服

 • 降圧薬を夜に内服


で比較した大規模試験です。


その結果、


心筋梗塞・脳卒中・心血管死の発生率に差はなかった


つまり、

 • 「夜に飲まないと脳卒中が増える」

 • 「朝内服は効果が弱い」


といった考え方は、エビデンス上は支持されなかったのです。



夜間血圧とは?


dipper/non-dipperの基本

人の血圧は、24時間ずっと同じではありません。


通常は、

 • 日中:活動により血圧が高い

 • 夜間:睡眠中に血圧が下がる


というリズムがあります。


この夜間血圧の下がり方によって、次のように分類されます。


● dipper型

 • 夜間血圧が日中より10〜20%低下

 • 生理的で正常なパターン


● non-dipper型

 • 夜間血圧の低下が10%未満

 • 夜も血圧が高いまま


さらに重症になると、

 • riser型(夜間に血圧が上がる)

もあります。



non-dipperが問題になる理由


多くの研究で、

 • non-dipper型

 • riser型


の患者は、

 • 脳卒中

 • 脳出血

 • 心不全

 • 腎障害


のリスクが高いことが示されています。


特に脳神経外科領域では、

 • 高齢者

 • 脳卒中既往

 • 自律神経障害

 • 睡眠時無呼吸症候群


などで、non-dipperが多いことを経験します。



「だから夜に降圧薬?」…とは限らない


ここで混乱しやすいポイントがあります。


「夜間血圧が高い

→ 夜に降圧薬を飲んだ方がいいのでは?」


一見もっともらしく聞こえますが、

TIME試験は、この考え方にブレーキをかけました。


TIME試験では、

 • 内服時間を夜にしても

 • 朝にしても


心血管イベントは変わらなかったのです。


つまり、


non-dipperだから

→ 夜内服が“必ず正解”とは言えない


ということになります。



看護師として重要な視点①


「内服時間」より「血圧が下がっているか」

夜間血圧が問題なのは事実ですが、

重要なのは

 • いつ飲むか

ではなく、

 • 24時間を通して血圧が適切にコントロールされているか


です。


現在の降圧薬は、

 • 長時間作用型

 • 24時間安定して効く


ものが多く、

朝内服でも夜間血圧を十分に抑えられるケースが多いのです。



看護師として重要な視点②


夜内服=安全、ではない

特に注意が必要なのは、

 • 高齢者

 • 脳卒中後

 • 夜間トイレで起きる患者


です。


夜内服によって、

 • 夜間低血圧

 • 立ちくらみ

 • 転倒


を招く可能性があります。


non-dipperを意識するあまり、

転倒という別の重大リスクを増やしてしまうこともあります。



患者さんへの説明に使える一言


「夜の血圧が高い人は確かにいますが、

最近の研究では、

お薬を朝飲んでも夜飲んでも効果は同じと分かっています。

一番大切なのは、毎日続けて飲めることですよ。」


この説明は、

 • non-dipperの知識

 • TIME試験のエビデンス


の両方を踏まえた、非常にバランスのよい説明です。



まとめ

夜間血圧には、dipper/non-dipperという重要な概念がある

  • non-dipper型は、脳卒中・心血管イベントのリスクが高い

  • しかし、TIME試験により、降圧薬の内服時間(朝・夜)で予後は変わらないと示された

  • 看護師に求められるのは、**「何時に飲ませるか」ではなく、「24時間を通して安全に血圧がコントロールされているか」「その人の生活背景の中で、無理なく継続できているか」**を評価する視点である


つまり、エビデンス × 生活背景 × 安全性この3つを統合して判断できることこそ、これからの脳外科看護に求められる“臨床力”なのです。


TIME試験が教えてくれたのは、「正解は一つではない」という、極めて臨床的な真実です。

患者さん一人ひとりの疾患、年齢、ADL、生活リズム、転倒リスク——それらを総合して考え抜く力こそが、看護師という専門職の価値そのものだと言えるでしょう。

私たちの団体では、こうした**“エビデンスを臨床で使える知識へ変換する力”**を育てるため、脳神経外科領域に特化したセミナーや、実践的な情報発信を行っています。

  • もっと臨床判断に自信を持ちたい

  • 医師の説明を深く理解できる看護師になりたい

  • 「なぜ?」を言語化できる知識を身につけたい

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